ボディーコーティングがわかる

消費者の好みが目まぐるしく変わるため、国内メーカーの開発リードタイムが従来のように三十六ヵ月とか四十八ヵ月もかかっていたのでは話にならない。 かつてのように、開発リ-ドタイムは必ずしもモデル・チェンジのサイクルとは一致しなくなってきた。
ヨーロッパの高級車では十年をかけるのが普通であり、アメリカでは八年が一般的だった。 たとえば、フオルクスワーゲンの主力車種では、八年かけていた。
開発リ-ドタイムが長いほど開発コストもよけいにかかるが、それだけが問題ではない。 それよりも、市場に投入するころにはすでに傾向が変わっていて、見向きもされなくなっていることがこわいのである。
もちろん、搭載した新技術も陳腐化してしまう。 世の中の好みの変化に素早く対応でき、最新の技術も盛り込めるよう、開発リ-ドタイムをできるかぎり短縮しなければ、からの競争には勝ち抜いていけない。
最近では、他社より一日でも早く市場に投入して新鮮味があるうちに売りさばくことが至上命令となっている。 半年一年後に同じようなコンセプトを売り出しても、以前から待ちこがれていた顧客がすでに先行商品を買ってしまったあとで、販売台数は伸びず、新鮮味も失われている。
消費者の好みを予見することがむずかしい時代の処方筆であり、企業が致命的なダメージを受けないですむ方策でもある。 こうしたやり方は、なにごとにも組織で取り組み、残業に次ぐ残業もいとわず、がむしゃらに突き進む日本のメーカーの得意とするところである。
技術者のプライドが高く、個人主義傾向の強い欧米のメーカーでは、製品を開発する場合、専門の垣根を取り払って、部門を越えて話し合い、調整しながら同時並行で進めるということができにくかった。 一般的に、プラットフォーム、エンジン、ボディ、内装、電気関係といった主要部門が独立したかたちで開発を進めていく方式だった。

こうしたやり方では、ボディの設計ができ上がったあと、エンジン周辺や内装の設計を進めていくことになる。 そうしないと、ボディ設計の途中で問題が発生し、変更の必要が出てきた場合、収拾がつかなくなってしまうからだ。
この方式では、かなりの時間もかかってしまう。 ところが日本では、六0年代前半ごろから、開発主査に大きな権限を与えて新車開発の各部門を統括させ、同時並行で開発を進めていくという、サイマルテイニアス・エンジニアリング(同時並行開発)方式を採用している。
トヨタが先鞭をつけたもので、途中で変更があれば、主査が調整役最終決定者となって、各部門が話し合って決めていく。 ベンツでは高級車の開発に十年もの時間をかけていたが、トヨタの高級車「セルシオ」などでは、同時並行開発方式によって、ベンツの半分の開発リードタイムでベンツ車に近い草をつくり上げている。
この方式では、開発段階から部品メーカーが参画し、設計をまかされて、自らも図面を描き、同時並行で進めていく。 をデザイン・インと呼ぶ。
かつてのように、完成車メーカーから完成した図面をもらって、とおりに部品をつくっていたのでは、時聞がかかってしまうからだ。 一九九八年五月に三菱が発表した方式は、をさらに一歩進めて、新車を開発する初期段階から、部品メーカーと共同で部品を設計・開発する手法を本格的に導入する。
他社でも、同じような取り組みをはじめているが、完成車メーカーの設計部隊と、八十にのぼる部品メーカーが共同開発チームを結成するところまで踏み込んでの開発は初めてであり、ドアやエアバッグ、インスツルメントパネルなどの大物部品を含む約三十の部品を対象とする。 完成車メーカーが長年かけて、指導し、育成してきたのである。
日本車メーカーではこの開発方式を武器に売り上げを伸ばし、輸出を拡大してきた。 日本の成功で、欧米のメーカーもこの方式を取り入れることになった一方で、サイマルテイニアス・エンジニアリングによって、新車開発の数が不必要に増え、過度のモデル・チェンジを生む要因ともなった。
日本車メーカーは開発が俊敏なるがゆえに、自転車操業的に次から次に開発を進め、矢継ぎ早に新車を出していくことになる顧客のニ-ズに対する過剰反応のあまり、消費者のわがままに振りまわされすぎるところもある。 結果、必要のない装備をつけてみたり、車種をいたずらに増やしたりすることにもなる。

モデル・チェンジの数が増えれば、生産設備への投資も膨らむ結果、でき上がった商品に、特徴もなければ、メーカーとしての主張も一貫性もない、いわば総花的な商品となってしまう可能性もある。 といった不満もないかわりに、コンセプトにメリハリも個性も感じられず、全体として魅力に欠ける商品になってしまう。
日本車にはこうした傾向が強く、消費者の不満を買っている。 日本のメーカーでは、じっくり時間をかけて検討し、自らの主張も込めて、自信をもって世に問うというやり方をしているところはあまりない。
乗れば乗るほどよさがわかり、消費者を魅了してやまないという車が、きわめて少ない膨大な量の販売情報や市場調査のデータをコンピュータにインプットして分析し、結果に基づいて新型車のコンセプトを決めていくことが多い日本の開発方式では、どうしても特徴のない車が生まれやすい。 こうした無駄なモデル・チェンジを繰り返す日本のやり方は浪費ものとして、欧米から批判を受けているのも事実である。
一九九七年三月、日産自動車は、九七年度以降に発売する新型車は、車種を問わずすべて、開発リードタイムを従来の三十ヵ月から十九ヵ月に短縮すると発表した。 最近流行のRV車などは、早く市場に投入する必要があるため、開発リードタイムが十五ヵ月というのも珍しくない。
日産における従来の開発手順では、設計部門が描いた図面をもとに十ヵ月を要して忠実に試作車をつくり、このあと、生産部門が二十ヵ月かげて生産の具体的な手順を決めていた。 日本よりはるかに長い六年もの開発リ-ドタイムが当たり前だったクライスラー、「ネオン」では、従来の半分以下の三十一ヵ月だった。
やがては日本車並みに二十四ヵ月になるといわれている。 もともとCALSは米国防総省がつくったシステムである。
先の基幹情報システムと共通するが、図面やマニュアルなどを、共通のル-ルに基づいて電子化してデータベースにする。 ネットワークを研究、開発、製造、品質管理、販売といった親企業の各部門だけでなく、部品や材料のメーカーにも広げる。
それによって情報の共有化が進み、三次元画面でのやりとりができるようになる製品の研究開発段階から並行して資材の調達や製造工程への指示などもできる。 海外拠点や部品メーカーとの設計変更などのやりとりも即座に対応でき、販売店からの顧客情報も共有できる。

もちろん、開発リ-ドタイムの短縮やコストダウンには大いに役立ち、マルチメディア時代に即した情報システムでもある。 それだけに、大いに期待され、からますますさかんになるだろう。
ただし、システムが大きく複雑なだけに、使いこなすまでには相当の年月が必要である。 遅まきながら日本でも情報システムの分野に関しては、日本はアメリカより五年以上も遅れているといわれている。
CAころが、最初は慣れないせいもあって、コンピュータより人の手で図面を描いていたほうが早く、効率もよかった。

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